私たちの思い

わたしたちは、広島県の山奥、芸北地域にある限界集落で『芸北ぞうさんカフェ』という喫茶店と『ぞうさん出版』という出版社を営んでいます。「芸北(げいほく)」は「安芸の国」の北部にあることに由来しています。

『芸北ぞうさんカフェ』は、2013年の4月にオープンしました。

スリランカのスパイスと自給自足の旬の野菜を使ったカレーや、予想を超える大きさの手ごねピザが人気です。高冷地の風に吹かれながらのJAZZライブや、寝そべって流れ星を鑑賞する天体観測など、さまざまなイベントも開催しています。

『ぞうさん出版』は2018年に立ち上げた「世界で最も過疎地にある出版社」です。

自費出版ではないんです。著者・編集者・デザイナーが力を合わせて本をつくり、全国の書店に流通させるメジャーレーベルの商業出版社です。

2018年には、築地の魚市場での偶然の出会いからスリランカの「ぞう」に行きついた実話を冒険小説にした『冒険起業家 ゾウのウンチが世界を変える。』(著・植田紘栄志)を刊行。

2019年には、視野を広げる宇宙の楽しい話が詰まった『Think Galaxy 銀河レベルで考えろ』(著・井筒智彦)、広島の街づくりに文字通り命を捧げた男の物語『女房とワシと恋女房 51年209日』(著・山根進)の2冊を刊行しました。

――― なぜ過疎の田舎で? ―――

ハードな過疎地で喫茶店や出版社をはじめるとき、いろんな方々が「絶対、無理だ」「やめたほうがいい」とアドバイスしてくださいました。それでも、わたしたちは、冒険心を持ってチャレンジしました。

なぜそんなチャレンジするのか? 2つ理由があります。

① 過疎を吹き飛ばせ!

日本の底力を担うのは、おいしい農作物を作る田舎です。

田舎の元気がなくなると、日本の元気がなくなります。

日本の元気がなくなると、子どもたちの元気がなくなりますよね。

子どもたちが、希望をもって今を生き、世界中で活躍できる人材になる。

そのためにも、過疎の進んだ田舎を盛り上げることが大事だと考えています。

② 田舎はもはや、癒しの空間ではなく、サバイバルの拠点である!

自然災害が多発する今、わたしたちは安全保障のために田舎に拠点を持つことが重要だと考えています。

かつてから問題視されていた都会への一極集中は、新型コロナウィルスの感染拡大にも悪影響を与えました。

みなさんにも、自由で幸せな暮らしをおくるために「田舎暮らし」という選択肢をもってほしい。

こうした思いもあり、田舎のすばらしさを発信すべく喫茶店や出版社というチャレンジをしています。

――― 不安だらけの現代を生き抜くために必要なのは、本とコーヒーである ―――

現代は不安だらけの時代になってしまいました。

感染症が広まったり、自然災害に襲われたり、AIに仕事を奪われたり…。

予測できない不確実な時代を生き抜くためには、どうしたらいいんでしょうか?

わたしたちは、仮説を立てました。

身の回りにあるもので、わたしたちに寄り添い、チカラを与えてくれるのは「本」と「コーヒー」ではないだろうか?

「本」からは、直接会うことのできない偉人や賢者の話にじっくり耳を傾けたり、数奇な経験をした人の人生を追体験することで、知識、判断力、思いやりなどの力を養うことができます。

「コーヒー」には、混乱した頭を整理し、体からストレスを取り除いてくれる力があります。それに読書との相性がピッタリですよね。

そこで、わたしたちは、2020年、新たなチャレンジをすることに決めました。

1つ目のチャレンジは、コーヒー豆の自家焙煎です。

ぞうさんカフェでは、焙煎済みのコーヒーを仕入れて、お客さんにコーヒーをお出ししていました。

でもこれからは、ほんとうにリラックスできる最高のコーヒーを、できるだけお手頃な価格で提供したい。そのために、世界中から選りすぐりの生豆を入手し、自分たちで手間暇かけて焙煎器でじっくりと焼きあげよう。

こうして誕生したのが『ぞうさん珈琲』です。

よくよく考えてみれば、コロナ時代でお客さんが減って大変だった中、焙煎器を導入して、新規ビジネスを立ち上げてしまったわけです。

そして2つ目のチャレンジは、『バカの壁』の著者・養老孟司先生の本の刊行です。

「本」が大事と書きましたが、誰の本を読むのかはもっと大事ですよね。

そこで、解剖学者、東大名誉教授、平成で最も売れた実用書『バカの壁』の著者である養老孟司先生に、ぞうさん出版から本を出していただけないかお願いをしました。

養老孟司先生は「世間はこう思っている」「常識はこうだ」という考えに疑問を投げかけ、どのような状況になっても、自分の頭で考えるための物の見方を優しく教えてくれます。

“考えないと楽だけど、楽をするとあとで損をしますよ”

“世間には正解が好きな人が多いことはわかっています。でも世の中に正解がないことも多いんです”

“自然との共存とは美しい言葉ですが、実際には難しい。大切なのは、嫌いでも害はない、ということに気づくことです”

不安だらけの現代を乗り越える「自分の頭で考える力」を養うため、養老先生の言葉を届けたい。

そうはいっても、ぞうさん出版のような田舎の小さな出版社では無理な話か…、と思っていたら、なんと養老先生は快く引き受けてくださいました。わたしたちの田舎での活動にとても共感してくださったようです。

さらに驚くべきことに、養老先生はぞうさん出版の名誉顧問もつとめてくださることになりました!

とにかく動いてみるものなんですね。

―――『ぞうさん珈琲』は他とちょっと違います ―――

養老孟司先生の本は、現在、編集中です。この本を完成させるのは、そう『ぞうさん珈琲』を手に取ってくださる「あなた」です。

「コーヒーを飲みながら、読書を楽しむ」

「読書をしながら、コーヒーを楽しむ」

この体験をより奥深くするために、『ぞうさん珈琲』には、『ぞうさん出版』の本づくりへの参加や、養老孟司先生をはじめとする著者との交流ができる機会(月額会員サロン『本とコーヒー』)を準備しています。

もちろん、豆を手に取って飲んでいただけるだけでも嬉しいです。

もしお時間があれば、コーヒーを飲みながら、本づくりでどんなやり取りがされているか、覗いてみてください。

もっと積極的に関わってみたいと思ってくださった方は、ぜひ一緒に本をつくりましょう。装幀(表紙デザイン)に意見したり、ストーリーに味付けしたり、ゲラ(原稿)の校正をおこなったり…。

これからどうなるかわかりません。

それでもワクワクすることにチャレンジしつづける。

そんな「本と冒険と遊び心の自家焙煎コーヒー」、これが『ぞうさん珈琲』です。